本音と妥協の結果を正直に説明できる文化を望む

返信したい内容が100字を超えたのでこちらで。

私は、「行政府は、当然に連立与党の合意に従う」という前提を置いてます。

実際、ドイツでも緑の党などは、連立を組んでも政府見解と異なる主張を繰り返していましたが、それで行政が混乱したという事実はないと、私は認識しています。緑の党には緑の党の理想があり、その理想をまげて、連立政権に参画するのですが、そういう現実をきちんと国民に説明する方が、政治の在り方として真っ当だと思います。

従来、党の意見は幹事長が述べ、党首でもある総理大臣は党の意見を述べないという、「声の使い分け」をしてきたわけですけれども、しばしば党首と幹事長とで意見が異なるなど、あまりうまくいっていたとは思えない。すると「官邸筋」とか「政府高官」などのコメントが報道に載ることになり、個人的にはバカバカしい限りだと思います。

自民党としてはこうしたいが、公明党との連立なしに政権は成り立たない以上、いろいろ妥協して、結局のところ政府の見解はこうなる……というのは、何ら難しい話ではなく、せいぜい必要なのは「慣れ」だけでしょう。

そもそも、政党と個々の政治家との間にも、妥協はたくさんある。そういう事実を、表面的に隠蔽することに意義があるとは、私には思えない。現実を素直に表に出す方がいい。公開だろうと非公開だろうと、どのみち直接に顔を合わせる部下たちは、上司の本音を知る機会があるでしょう。しかし行政府は、手続きと建前に従う。

会社でも同じじゃないですか? 直属の上司の本音が「プロジェクトの継続に反対」であっても、そして自分が上司と同意見でも、異なる意見でも、会社の方針が変わらない限りは、プロジェクトの推進に全力を尽くす。そこに迷いも混乱もないと思います。「あなたの考えを話してください」といわれれば話すし、必要だと思えば上申書を書くかもしれないけれども、それとこれとは別問題。(無論、法令違反の指示なら従わないけれども、とりあえず今は、そういうケースは想定していない)

追記(2017-05-10 19:15:00)

党内の議論の「結論」を示したわけではなく、党の総裁として、この方向で議論を活性化したいという考えを示したわけですよね。なまじ非現実的な自民党案があるばっかりに、党内の改憲機運すら停滞している状況を、どのように打破するか、その提案でした。

以前の憲法改正のハードルを下げる案は、自民党案の一部を先に国会に上げようという提案で、党内論議で引っ掛からない点は有利だったものの、野党も世論も総スカンで、仕切り直しを余儀なくされたわけです。今回の9条改正を正面から問う……といいつつ、現行の9条はそのまま残して、第3項を追加して自衛隊合憲を明確化するという提案は、党内論議からやり直す必要がある点はネックであるものの、どうせ自民党案を国会に出すのは無理なのだから、それは避けられないステップだったと思う。

総理大臣が国会論議に先駆けて施政方針演説をするように、自民党総裁というのも、党内論議の結論を国民に説明するだけの立場ではなく、党内論議をリードする役割を担っているわけです。中立のまとめ役ではない。だから、党首としての決意表明なり、将来展望なりが、必ずしも、党内のコンセンサスを得ている必要はなく、しかしそうだからといって、平の一議員の発言と同じ意味合いしかないわけでもないと思います。

さて、石破さんは自民党案起草の中心人物でしたし、反総裁派の代表でもあり、つまり党内論議が停滞していることの主原因なので、当然に、事前の相談はない。

では安倍さんは事前に誰にも相談していなかったのかといえば、そうではないらしい。例えば、9条改正慎重派であることを公言してきた岸田さんが、すぐに賛意(ただし「党内で議論することへの賛意」であって9条改正への明確な賛意ではありませんでした)を表明したのは、事前に一定の根回しがあったことの表れでしょう。憲法改正のハードルの高さを思えば、改正反対派はそもそも「議論しない」のが有利なので、加憲なら議論を許容するということ自体、半分は前向きなのだと解釈できます。

はてなハイクより転載)