「誰が総理でも失業率は低下していた」説が正解であってほしい

1.

id:TakamoriTarou 何を反論されているのかよくわからないので、返答になっていないかもしれませんが、とりあえず私のいいたいことを書きます。

2.

まず私が「数年」といっているのは、「3~5年」程度の感覚です。

世銀の想定詳細PDF)の通りに経済が推移すれば、2020年の日本経済は6.1%の縮小にとどまり、2021年には2.5%の成長となります。2019年水準まで回復するのはもっと先ですし、雇用は遅行指標ですが、その遅行期間は一般的には数ヵ月から半年程度とされています。

仮に世界銀行の予測が甘いとしても、コロナ禍によって毎年経済が縮小していくとは考えにくい。コロナ禍2年目以降の経済は、前年比+0%以上になるはずです。何らかのマイナスのショックが追加で発生したなら話は別ですが、さもなくば2021年には経済は底打ちし、遅くとも2022年には雇用が回復に向かうでしょう(2019年水準の回復は遠くとも、少なくとも底打ちして回復方向には向かうはず)。

「経済政策の舵取りをするのが誰であっても、人口動態から必然的に安倍政権下と同等の失業率低下は実現できた」とするならば、そういう話になると、私は考えています。

3.

「誰が総理でも同じだった」論にもいろいろありますが、私が念頭に置いているのは、「人口動態による必然」説です。1995年に生産年齢人口がピークアウトした日本(リンク先PDF注意)では、「ピークは過ぎたがほぼ横ばい」の状況から明確な生産年齢人口「減少」へ転じる2005年以降、人手不足が深刻化し、失業率に趨勢的な低下圧力がかかり続ける……という予測が、それです。

実際、失業率は2003年にピークを記録した後、リーマンショック等の外乱を経ても、「経済停滞が底を打ちさえすれば、失業率は低下に転じる」傾向が観察され続けてきました。

一方、1990年から2003年までは、実質GDPは平均的にはプラス成長だったにもかかわらず、ほぼ一本調子で失業率は上昇していました。経済成長が必然的に失業率を改善するわけではありません。

2003年に失業率が反転したのは、福井日銀の大規模金融緩和により「物価の持続的下落にブレーキがかかった」ことの成果だと、私は認識してきました。しかし実際には、人口動態が失業率反転の主要因であって、金融緩和は(あまり)関係なかったのかもしれません

私には、どちらが正しいのか、わからない。

4.

私は「失業こそ最悪」と考えており、リフレ政策(≒アベノミクス)を支持するにあたり、「これで年率2%超の力強い経済成長が実現したら嬉しいが、最低限は失業率さえ改善すればよい」と思いました。

残念ながら、まさに「失業率の低下という最低限の成果」しか現実とはなりませんでしたが、「ともかく失業率が下がったなら、それでよしとしたい」と、私は考えてきました。

やっと、30年前の、私が小学生だった頃の失業率に戻ったのです。高校や大学を卒業しても就職先がないなんて心配をしなくてよい時代が復活したのです。人が常に現状以上を望むのは自然なことですが、この成果を一顧だにせず経済政策を大きく変えようと訴える人を、支持する気にはなれませんでした。

が、いつまでも続く政権など弊害が大きい。私も安倍政権にはウンザリしており(とくに昨年来、はてブに何度もそういう心情を記しています)、やっと終るのはよいことだと思います。ただ、現状、誰が後を継いでも「相対的には金融引締の方向」なのは残念です。

とはいえ、2003年の失業率反転も、2011年以降の失業率改善も、インフレ・デフレとはあまり関係ない事象だった可能性は否定できません。全ては偶然だった……のかもしれない。

ならば、安倍政権が終り、誰もその金融政策を引き継がない以上、「失業率の低下傾向は金融政策とは無関係」であってほしい。政府の経済政策が相対的に金融引締の方向となっても、低失業率社会の趨勢は変わらないでほしい

5.

今後数年の日本経済を、私は祈るような気持ちで見ていくことになると思います。

当面はコロナ不況で失業率は高まるでしょうが、前述の通り、コロナ禍は「毎年、前年比で経済が縮小する」ような要因ではないので、本来、コロナ禍のせいで何年も失業率が上昇し続けるわけがない。絶対水準として2019年の就労者数、失業率を回復するには時間がかかるとしても、数年の内に就労者数は下げ止まり、失業率は上げ止まるはずです。

そうならないとしたら、約10年続いた失業率の低下には、やはり何らかの理由があった、政権交代によって何かが変わったために、趨勢的な失業率の低下圧力が(十分には)機能しなくなってしまった、ということになると思います。

が、絶対そうはなってほしくない。安倍政権の経済政策は失業率の改善に関係なかった、という明確な結果が出てほしい。

6.

  • 最初から敗北を運命付けられている闘い2005-11-08
    リフレ政策は、その利点の説明さえ耳に優しくない。例えば、なぜリフレ政策で失業率が下がるのか。竹森先生の「月刊現代」の連載を読んで、ようやくスッキリ納得したのですが、その答えを聞いて驚くなかれ、「賃金の上昇は物価高と雇用増に遅れるから」だという。「大幅な物価安+小幅な給与低下→失業増大」だから「大幅な物価高+小幅な給与上昇→雇用回復」が処方箋なのです。「俺の給料は安過ぎる」と思っている一般国民が支持できる内容でないことは明白です。

これは15年前のメモです。このあたりの理屈は、今も(個人的には)正しいと思っています。が、正しくなかった可能性もあるわけです。

私は「いち有権者」以上でも以下でもない。自分に「百家争鳴の経済理論のどれが正しいかジャッジして経済政策を選択する」なんて責務があるとは考えていません。「正しそう」に思える主張、「自分にとって、より不安が少ない」主張を支持していく。

これまでも、これからも、それ以上は私の能力を超えた話です。

補記

文体を変えます。

増税について。

1993年当時、私は有権者ではなかったが、消費税反対で伸長した社会党細川政権で消費税を容認し、翌1994年3月に国民福祉税構想が発表されたのには驚いた。さすがに社会党は連立を離脱したが、6月には村山内閣が誕生した。3年後の1997年4月には、閣外協力とはいえ自社さ連立の橋本内閣で消費税が増税された。唖然とした。土井たか子さんは、当時まだ現役の衆院議員だったのだ。

2010年、民主党政権菅内閣は消費税増税を打ち出して参院選に敗北した。2012年、野田内閣は2009年衆院選の公約に反して増税を決めた。小沢一郎さんたち国会議員100余名の離党すら顧みず決定したのだから、たいへんな覚悟だ。

増税のたび、与党は議席を減らした(1979年衆院選、1989年参院選、1998年参院選、2010年参院選など)。それでも、懲りない。自民党は消費税のために何度も選挙で大敗してきたし、社会党は壊滅的な打撃を受け、民主党はまさに消費税で政権を失った。それでも、当時の指導者たちは反省していない。後のインタビューでも、著書でも、胸を張っている。

どの政党に投票しても、結局、消費税は増税される。私は、そう諦めた。なので、消費税の増税に私は強く反対だが、選挙の時に消費税に関する見解で支持・不支持を決めようとは思わない。

ありえないと思うが、仮にれいわ新選組が政権を担当することになっても、消費税の減税は実現されないと思う。今のれいわ新選組が、そのまま政権与党になることはない。政権を取れるだけの支持を得るまでに、消費税を減税できない政党に変質してしまうのだと思う。

いずれかの政党が、一度でいいから本当に政権与党として消費税を減税してみせるまで、私の無力感は払拭されないに違いない。