「高値で大勢に売る」ことはできない

元の記事は、仮押えによってチケット供給を絞って値段を釣り上げ、ノーリスクで転売する話なので、"「市場原理による価格決定」とは言わない"ことに同意しますが、後半は誤りです。

需要曲線は、少量なら高値で売れますが、より多くを売るためには価格を下げなければならないことを示しています。

多くのチケットは、大半をファンが購入しており、転売市場には一部しか出回らないので、定価を大きく超える価格で売れるのです。

はてブでよくある誤解とは逆に、1次購入者に占める転売業者の割合が増えれば増えるほど、転売価格は下がります。転売市場へのチケットの供給が潤沢になるからです。需要曲線を外れて「高値で大勢に売る」ことはできないのです。

定価が均衡価格と一致していても、買い占めによって利益を得られる可能性はあります。例えば時間差の利用が考えられます。早くにチケットを欲しがるのは熱心なファンが多い……とすれば、最初は定価より高く売っても買い手がつくでしょう。しかし定価が均衡価格と一致している場合、結局、公演の直前になれば定価と同じ価格でなければチケットは売れなくなります。最初は高値でとびついたファンも、次第に価格が下がることを学習すれば、何度も高値で買ったりはしません。

ですから、定価が均衡価格と一致している場合、買い占めによって実現可能な利益は僅かであって、通常は手間に見合いません。

高値で買ってもいいと思う人も、安く買えるなら安く買います。売り手には、買い手の需要を読み取って、買い手毎に異なる価格を提示する方法が、ほとんどありません。売りたい数が増えれば、それだけの数をさばける値段まで下げて売るしかないのです。

はてなハイクより転載)