たつき監督に『けものフレンズ』2期より新作を期待するファンもいる

けものフレンズ』の2期から、たつき監督が降板した(らしい)件について。

1期のネタバレあります。

houjiT さん、たとえ失敗作でもいいからたつき監督による『けものフレンズ』2期を見たいとまで仰られている以上、以下の内容は反論でも説得でもありませんが、いちおうIDコールさせていただ……こうかと思ったけど、やめときます。意味もなく、こんな長文記事を送り付けるのもどうかと。

けものフレンズ』1期は、「オリジナル作品で先が見えない」ことを最大限に活かした作品でした。11話ショックはその頂点であり、監督が主人公を生存させるのか殺すのか、正直わからないことが最大のポイントだったように思います。

キャラを粗雑に殺す脚本家の場合、唐突にキャラが死んでも「想定の範囲内」で驚かれない。たつきさんは、1期でキャラを大切に大切に扱ってきて、それでもいざとなったら殺すかもしれないと思った。「まさか、殺さないだろう」とは思いつつも、絶対に殺さないとは限らないぞ、と。

でまあ、12話がどうなったか。死んだけど死ななかった、という展開になった。よくわからない人は、わからないでよろしい。でも、この一文だけでも、先に知っていたら、11話ショックを本当に追体験することはできない。

ただこれって、たつきさんが新人監督だったから、成立した話だったと思う。富野由悠季監督作品だったら、いくら途中までどう描いていようと、「まあ、いざとなれば監督は躊躇なく殺すだろう。実際にはこれまで主人公を殺したことはないが、今回初めて殺しても驚かない」と思いながら見てしまいます。そこに11話が来ても、「いつか来ると思ってたよ」という思いが先に立つし、主人公が死んでも死ななくても驚かない。

たつき監督は1期で視聴者の期待に100%応えてみせたけれど、その結果、次回作以降とてもやりづらくなりました。それは、監督が背負っていかなきゃいけないことで、まあ仕方ない。(突き放したような書き方をしましたが、私は『C』『ガッチャマン クラウズ』『PSYCHO-PASS サイコパス 2』『てさ部シリーズ』と、主な関与作品は一通り見てる程度のファンです)

でも、けもフレ2期はどうだろう。『けものフレンズ』のゲーム版は、アニメがヒットしてから見直されましたが、ふつうに面白いストーリーが用意されていたのでした。しかしヒットしなかった。なんでアニメ版がヒットしたのかはよくわかりませんが、何より先が見えないストーリーが良かったんじゃないでしょうか。しかしその点を2期でも踏襲して、先の見えない旅をする物語を同じたつき監督が繰り返した場合、視聴者は安心しきってしまうと思う。それを無理に裏切れば「余計なことをした」といわれるだろうし、裏切らなければ縮小均衡は免れない。(でも、1期で用意した以上の謎って、用意できるものなんでしょうかね?)

これほど大ヒットした作品なのだから、縮小均衡でいいではないか、ファンが飽き飽きするまで縮小均衡の道を堂々を歩めばいい……ともいえますが、ならばそれこそ、たつき監督が貴重な人生を費やしてまでやる仕事ではないと思う。

では、監督が交代すれば、どうなるか? 1期をほうふつとさせるようなストーリー展開であっても、究極的に話がどう転ぶか、またわからなくなります。けもフレ1期のドキドキ感は、2度繰り返すのが難しいものです。もし繰り返したかったのなら、『LOST』のように、シーズンの区切りでスッキリ「させない」工夫が要る。1期12話で素晴らしい結末を提示してしまった以上、1期の成功を再現しようとすれば、1期とは異なるスタッフが必要になるのは道理です。

あるいは、1期とは全く違った物語を用意して挑戦する道もあります。それなら、たつき監督が挑戦するのも面白い。……ただ、それならそれで、監督を交代するという選択肢が無視できなくなってくると思う。

エイリアン2』は、リドリー・スコットではなくジェームズ・キャメロンが撮りました。それでよかったと思う。

ダイ・ハード2』は、ジョン・マクティアナンではなくレニー・ハーリンが撮りました。これもよかったと思う。ハーリンが密室劇という縛りから一歩踏み出したので、『ダイ・ハード3』で復帰したマクティアナンは、また自由な発想で作品を作れたし、シリーズも長く続くことになりました。

以上、1期を踏襲するにせよ、全然違う2期を作るにせよ、成功するか失敗するかはわかりませんけど、けもフレ2期は他の監督に任せてもいいんじゃないかな、と。

私はけもフレのオフィシャルガイドブック全6巻を買って読みましたが、その感想として、むしろ2期より新作を見たいと思ったんです。3Dアニメの利点を活かして、何度も手戻りしながら仕上げていったという1話制作時のエピソードなどを詳しく知るにつれ、当然たつき監督は2期を作りたいのだろうけど、たつき監督に若さと体力が残されているこの数年間を、いったんスタイルが完成したけもフレに費やすのは、もったいないんじゃないかと。

ある程度、いろいろやってから、また戻ってくるなら新しい価値が出てくると思うのですが、「鉄は熱いうちに打て」は、むしろたつき監督自身のことであって、けもフレは待っててくれると思うんです。たつき監督に任せても、また2年か3年かかるわけじゃないですか。監督自身はずっと作業を続けているのに、作品は「お久しぶり」で、その内容がもし1期のまんま続きだったら……。

ま、コンテンツの寿命が延びてる昨今のこと、私の懸念は杞憂に過ぎないのかもしれませんけれども。

マイケル・ベイの『トランスフォーマー』、気付けば10周年で夏に3年ぶりの新作。アメリカではふつうにヒットしたらしい。ドラクエも5年ぶりの本編新作が大ヒットした(堀井雄二さんはその間にもエグゼクティブディレクターとしてDQ関連の新作を18作品も発表していますが)。どちらも新しい要素を盛り込んでいますが、骨組みは過去の作品の延長上にあって、驚きがない。それでもファンは歓迎したのでした。

追記(2020-05-06)

その後、2019年1-3月期に、たつき監督の新作『ケムリクサ』と木村隆一監督『けものフレンズ2』が放映され、前者は好評、後者は大不評という結果になりました。たつき監督が続投していたら、たぶん『けものフレンズ2』は、そこまでひどい結果にはならなかったはず。

ただ、結果的にそうなったのか、意図的にかどうかはわかりませんが、『けものフレンズ(1期)』と『ケムリクサ』はクライマックスの構造が同工異曲。違う作品だから、いろいろ違った印象もあって、よかったのですが、同じ作品だったら「くり返し」の部分が気になる人も多かったのではないかと思う。

たつき監督版『けものフレンズ2』と『ケムリクサ』が、同時に世に出ることはありえませんでした。たつき監督の貴重な時間を、どちらに使ってほしかったか。結果が出た現時点での判断は、個人的には「『ケムリクサ』を観ることができてよかった」です。

はてなハイクより転載)