世界の大きな流れは一貫している

トランプさんがアメリカの大統領に当選したことについて、私は「流れが変わった」とは思ってません。なぜなら、若い世代に支持されていなかったからです。トランプ旋風は、一時的なバックラッシュに過ぎない。その「一時的」が、4年で終るのか、8年、12年16年と続くかはわかりませんが、長期的にはトランプさんは負ける側なのだと、選挙結果を見て思いました。

同様に、イギリスはEUを離脱しましたが、投票結果の分析を見るに、長期的には、移動の自由、自由な欧州市場は支持されるのだと、私は理解しました。それでいてイギリス連邦の解体も若い世代の支持が厚い。国家の機能の一部をEUへ移して大欧州を形成することと、より小さな国家、身近な国家を希望することを、若い世代は望んでいる。昨年に起きたことは、ありうべき変化にいったんブレーキをかけただけのことで、より大きな流れを止めるものではないと思います。

中国については、私が信頼するエコノミストや経済学者は、もともと「破たんする」なんていってなかったので……。

あと、市場への反発の大半は、再分配が足りない、経済成長のための社会の変化で損をした人への補償が(足り)ない、という問題に過ぎないと思うんですよね。私個人は再分配積極支持なので。BIも積極支持だし、非現実的だけど相続税も100%にしたらいいと思う。個人的なポリシーとして、相続放棄は親戚中に公言してますし、年収の1割を世界の絶対的貧困への寄付に回してもいる。パフォーマンスの範疇でしかないともいえるけれど、それなりに本気。

全体最適というならば、損をした人に100%の補償をしても利益が残るはず(だから100%補償せよ)。市場による諸問題の解決が十分な支持を得られないのは、補償が足りないから……という趣旨のことを原田泰さんは著書で主張されているのだけれど、私も概ねその通りだと思う。

ただ、原田さんのモデルをよく観察すると、勤務先が倒産して転職したら給与が上がった人は「変化の受益者」側にカウントされるし、従来は棚ボタ的な扱いだった地価上昇も補償原資として税金で吸収されるしで(その地価上昇益は個人の才覚や努力の反映ではなく、単なる幸運なので、単なる不運で損した人に分配される)、反市場の方々はもちろん、なんとなくこれまで市場派だった方々の一部にも、短期・中期的には受け入れ難い話ではあるかな、とは思いますが、私はこの方向で社会変革が進むことを期待してます。

はてなハイクより転載)